森口オリジナル商品の大定番。「カトレヤ印丸うどん」の開発秘話。

同じ名前でも、製法によって特徴がまったく異なるのが魅力の「うどん」。森口にも「カトレヤ印丸うどん」「龍野うどん」「播州手延べうどん」「宿祢もどり生うどん」とさまざまなオリジナルうどんがありますが、食感や太さ、コシの強さがどれも全部違っていて、どの商品にもそれぞれ違った美味しさがあります。

昔ながらの製法と現代の技術を合わせてつくった「宿祢もどり生うどん」や唐辛子を練り込んだ「播州唐辛子うどん」など、ユニークで新しい商品もあるなか、半世紀以上変わらない味わいで根強いファンがいる定番商品もあります。それが「カトレヤ印丸うどん」です。

「カトレヤ印丸うどん」は昭和40年頃に発売され、森口のオリジナル麺の中でも「ひやむぎ 南極」に次ぐロングセラー商品となっています。

開発当時のことを知る人も少なくなってしまいましたが、「ひやむぎ 南極」に引き続き、三代目・森口三郎の弟で元常務取締役である四郎さんに開発当時を振り返っていただきました。そのお話をもとに、今回は「カトレヤ印丸うどん」の開発秘話を紹介したいと思います。

ユニークなネーミングは当時の名曲から！？今明かされる、「カトレヤ印」の秘密。

「カトレヤ印丸うどん」、一番最初に気になるのは、その特徴的な名前ではないでしょうか。他のうどんは、地名や龍野にゆかりのある古墳時代の豪族・野見宿禰（のみのすくね）にちなんだネーミングが付いているのですが、丸うどんだけ「カトレヤ印」という不思議な名前が付いています。パッケージを見るとカトレアの花が描かれているので、確かに「カトレヤ印」ではあるのですが、どうしてカトレアなのかは気になるところです。

四郎さんによると「当時流行ってた曲の歌詞をヒントにしたんやったと思う」とのことで、調べてみると、確かに「カトレアのような」という歌い出しで始まるヒット曲がありました。

昭和39年に発売された舟木一夫さんの「花咲く乙女たち」という歌で、翌年にはこの曲をモチーフにした同名映画も公開されました。舟木一夫さんといえば「高校三年生」でデビュー、西郷輝彦さんと橋幸夫さんとともに「御三家」として当時の歌謡曲界を席巻されていた歌手。時期的にも「カトレヤ印」のヒントになったのは「花咲く乙女たち」で間違いないようです。

「ひやむぎ 南極」と同じく、丸うどんのパッケージデザインも原案は四郎さんの高校の同級生で、絵が得意なお友達が考えてくれたそうです。シンプルながら鮮やかな群青色と金色が渋く、丸うどんらしい丸ゴシックの書体と麺が覗く丸い窓が印象的。古さを感じさせない、普遍的なデザインとなっています。

丸うどんのパッケージにも描かれているカトレアの花は大輪で華やか、洋ランの女王とも言われています。そんなカトレアの花のように存在感のある商品になってほしいという思いもこもっているのかもしれません。

当時は珍しい丸刃を使った画期的な商品。「丸刃」ならではのソフトな新食感で人気に。

「カトレヤ印丸うどん」は、丸うどんという名前ですが、正確には小判型です。これは、丸うどんを生み出すきっかけとなった丸刃によるもの。

開発当時の昭和40年頃は機械麺づくりの主流は角刃で、丸刃はまだ珍しい存在でした。丸刃は切り出した麺には角がなく、断面が丸くなります。この丸刃を使ってうどんをつくったら新しいものができるのでは、と考えたのが始まりです。そうめんやひやむぎなどの細い麺なら丸くなりますが、うどんは幅と厚みのバランスで小判型になります。

丸刃に対して角刃は、文字通り切り刃が四角い溝になっているため、角のある四角い断面の麺ができます。包丁で切った場合も断面が四角い麺になり、讃岐うどんなどを表現する際によく使われる「エッジが立ったうどん」になります。

角刃の方がコシがあるとよく言われますが、コシや食感の違いは原料や茹で加減によるところも大きいため一口にそうだとは言い切ることはできません。とはいえ、角うどんの方がコシや噛み応えがしっかりしていて、丸うどんの方がなめらかでソフトなイメージになります。

最近は讃岐うどんのような強いコシのうどんが主流になりつつありますが、そればかりではないのもうどんの魅力。開発当時は特に柔らかいうどんが主流だった関西では「カトレヤ印丸うどん」の柔らかすぎない、適度なコシとツルツルとしたのど越しは新食感として、人気を博しました。

長く愛されるのは、オンリーワンだからこそ。個性ゆたかな森口のオリジナルうどん。

「カトレヤ印丸うどん」の物語はいかがだったでしょうか。新しい商品が増え続けるなか、丸うどんが変わらないままでいられるのは、丸うどんでしか出せない味わいがあるからこそ。丸刃で切り出した独特な食感となめらかなのど越しは、まさにオンリーワン。三世代にわたってご愛顧いただいているお客さまもいらっしゃいます。

ざるうどんや温かいおうどんはもちろんのこと、今の季節にピッタリなのはお鍋のシメ。300g3人前の一袋が家族で囲むシメにはちょうどいい量なのも嬉しいところです。

冒頭で書いたとおり、丸うどんは丸うどんの、他のうどんには他のうどんならではの違った美味しさがあります。おうちで食べる本格麺をコンセプトに開発した龍野うどん、手延べ製法にこだわった手延べうどんと丸うどんの3種類が楽しめる食べ比べセットもオンラインストア限定でご用意しています。それぞれの個性をぜひ楽しんでみてください。